GLM

Q. GLMのエンジニアリングサービスについて教えてください。

GLMでは、オリジナルカーとして自分たちで車の開発をして販売してきました。そこで作ったプラットフォームを使って、いろんな企業様がクルマを作りたい時にお手伝いするという形です。新しいクルマ作りをしたい会社さんがゼロから僕たちのようにクルマを作るとスゴい大変なので、GLMのベースを使ってゴールまで近くなるようにスタートするという感じです。

Q. エンジニアリングサービスにはどういったニーズがありますか?

例えば、部品メーカー様が自社の開発製品をクルマに載せて試験をしてみたいっていうニーズはスゴくたくさんあります。テストをするのに巷にある量産車を使うと都合が悪い時がたくさんあるのです。というのは既存の量産車から部品を外すとエラーが出て動かなくなったり、ずっと警告灯が点きっぱなしになるケースはたくさんあります。
なので、自分たちの製品をクルマに載せてテストしたいのに、ベース車両がうまく動かないっていう困りごとが多くて、テストを諦める会社さんがすごく多いです。
そこに自分たちが作ったクルマをベースに、企業様と一緒にある部品を搭載して試験をするというニーズがたくさんあります。そこは私達が自分たちでクルマ作りしているので、どの部品を外したら駄目なのかっていうのは、私達がわかっているということと、もう一つはシンプルなクルマを作っていますので、あまり余計な制御とか、余計な仕組みが入ってないクルマなので、比較的、新しいものを搭載して試験をしやすいベースというものをGLMは持っていますので、そこを活用して、いろんな企業様のクルマ作り、部品作りのお手伝いをしています。

Q. エンジニアリングサービスでは、どのようなケースがありますか?

これまでGLMでお仕事いただいた内容というのは、比較的、私達が作ったプラットフォームをベースにいろんな部品を搭載したり、違う仕様に作り直したりというのがほとんどでした。ですので、ゼロから新しいカテゴリーのクルマを作りたいっていうお話というのは、それほど多くはないです。私達が作ったプラットフォームをベースに、やりやすいこと、やれることというところで企業様とお話をして方向性を決めていくというやり方が今まで多かったですね。

Q. 興味深いエンジニアリングサービスの例を教えてください。

トミーカイラZZという、我々が作ったクルマのプラットフォームをベースにやらせていただいたお話の中で、こういう機能を追加して、全く別の車格のものを作り直したいっていうようなご要望が議論の途中で出てきまして、その可能性を私達で検討して、実際にクルマ作りをご一緒させていただいたというのがございます。
例えば、スポーツカーがベースなんですけど、SUVにしましたっていうのも一つの事例ですね。「AKXY」がひとつの事例です。
あとは表に出せないお客様の共同開発だったりクルマ作りというのがいくつかございますので、写真だったり、公に公開されてないのですけれども、クルマ作りをご一緒したっていうのはいくつかございます。

AKXY (2017)

Q. GLMにはどういったエンジニアが在籍されていますか?

自動車メーカー出身のエンジニアももちろんたくさんいますし、自動車部品メーカー出身のエンジニアもいますし、レーシングチーム出身だったり、過去にチューニングカーをやっていたメンバーだったり、そういう多様なメンバーが集まってきています。共通項としては結構、皆曲者というか、個性が強すぎるところがあるのですが、指示待ちではなくて、自分で考えて先に動いているというエンジニアが多いので、非常に逞しいメンバーが集まっています。

Q. 個性的なエンジニアとの開発エピソードを教えてください。

思ってもみないというか、聞いてもないことが勝手に進んでいたりするので、その中で「やってみたらこうなりました」っていうのはたくさんあります。各メンバーが自分の思いや、自分のポリシーに沿って仕事をしてくれているので、現場で生まれてくるものがたくさんあるので、それを一緒に見て触れてっていうことで、もちろん個人の技術の引き出しも増えますし、会社としても出来ることが増えていくので、そういうトライアンドエラーといいますか、失敗をどんどんやっていくっていうところで知見が深まっていくのを感じます。

Q. GLMのエンジニアリングサービスを通じた魅力はどういったものでしょうか?

一番はやっぱり現場でクルマ作りを一緒にさせてもらって、その車の出来栄えを一緒に体感できて、完成した時も、その完成を喜べるっていうところはモノ作りをやっているエンジニアとしては、一番楽しいシーンなので、それを企業様と一緒にできるっていうところが非常に魅力的と思います。

Q. エンジニアリング魂を奮い立たせる時はどんな時ですか?

「一緒にクルマ作りましょうよ」みたいなところっていうのは、エンジニアとしては、やっぱり、一番響くところなんで、そういうお話をここ最近いくつかいただいたりしているのが、エンジニアにとっては、非常にワクワクする取り組みたいなと思わせてくれるような活動になってます。本当にがっぷり四つになって、クライアント様のクルマ作りを、私達が黒子として、一生懸命やらせていただくっていうのは、その先に見えるものが、完成車そのものなので、非常にワクワクしますし、そういう取り組みがもっと増えてくると、より魅力的な環境でクルマ作りができるようになるんじゃないかなと思うんで、個人的にもそうあって欲しいなと思いますし、そういう事実が発表できると、また新たなお話をいただけると思うので、そういうふうに進んでいきたいなと思いますね。

Q. エンジニアリングサービスの大変な点はありますか?

いっぱいありますね。開発が大変というのはあるのですが、思った通りに進まないっていうことが日常茶飯事なんですけど、それが技術力とかではなくて、その部品が買えないとか、その開発をするのに非常にお金がかかるとか、あるいはその大手自動車メーカー様向けのお仕事で忙しくてなかなかベンチャー向けに工数をさいていただけないっていうお話が来たときは結構つらいところはあります。
そういうハードルが普通の自動車メーカーさんの開発よりも多いんで、それを乗り越えていく楽しさみたいなところを、苦しいんですけど、楽しいと思えていくと、ゴールに到達したときの達成感っていうのは、自分たちのモチベーションにしてやっているというのが我々の現状だと思います。

Q. 京都のテクニカルセンターの環境はクルマ作りに適していますか?

やりやすいと思います。特に今のお客様にも言われますけど、会社の中だと工具を持っちゃダメですとか、クルマに触れてはダメですっていうことを言われる企業様がかなり増えてきましたので、外に出てきていただいて、シガラミがないところで、もう一緒にクルマに触れながらクルマ作りをしていくっていうのは非常に魅力的な環境だと思います。GLMは秘匿エリアとして各部屋に、他の人が入ってこないようなエリアを設けていますので、その秘匿エリアにある企業様のクルマと一緒に、エンジニアさんも来ていただいて、一緒に作業するという環境がございますので、やりやすいと思います。

Q. 実際に共同開発とはどのように行われるのでしょうか?

新しいパワートレインやギアボックスを開発されている企業様がいらっしゃって、それを実際に車両に載せて自分たちで評価をしたい。その評価からデータを取って、改良したいというようなお話をいただきまして、そのためのベース車として私達のプラットフォームを活用いただいて、共同開発をしました。初期検討のところからご一緒させていただいて、京都に何度も来ていただいて、私達のプラットフォームを見ていただいて、議論をしながら、お互いが持ち帰って設計を進めて、また持ち合って組んで試してということを繰り返してきました。
ですので、ご依頼いただいて私達が開発するというよりは、同じ立場で一緒に車の開発をしてきました。できるだけ現場でご一緒させていただくのがお互いにとって一番いいと思いますので、なるべく来ていただいて車の前で一緒にやりましょうっていうのは私達が大事にしているところです。その方が、お客様皆さんが喜んでいただくというか、ほとんどの企業様は喜んでくださっています。

Q. GLMと共に開発するメリットはどんな点でしょうか?

GLMができて10年過ぎたんですけども、ようやくですね自動車メーカーさんからご一緒させていただくようなお話をいただけるようになってきたんですよね。自動車メーカーさんの困り事だったり、自動車メーカーさんがやりたいけど、なかなか社内ではできないことっていうのを、部活というか、社外活動を含めてお話をいただけるようになってきたっていうのは非常にありがたいことで、私達も取り組んでて非常に面白いので、そういったお話が増えてきたことで、GLMがお役に立てるケースが増えてくるなっていうのは非常に魅力的な傾向にありますので、そこをもっともっといろんなことができたらいいなとは思います。会社の外に出て現場があるところで気楽にこんなことしたいよねって話ができるのは、GLMの現場だとやりやすいと思うんでそういうメリットを感じていただいて、外に出てきていただくと面白いことができるんじゃないかなと思いますんで、そういう面で利用していただけたら嬉しいなと思います。

Q. 次世代プラットフォームはどういった方向性になりそうですか?

構想としてはあるんですけども、これだっていうのはまだ決めていません。私達が一番、最初に作ったトミーカイラZZという最初の世代のクルマを作る時は、まだEVの部品が世の中にあまりなかったんですよね。なので、限られた範囲の中で選択をしてクルマ作りをしてきたんですけども、現在は非常に多くの部品がありますので、選択肢としては非常に増えているので、その中で自分たちがやりたいことが非常にやりやすくなっています。ですので、しっかり企画をして、将来のお客様のことも考えながら自由度の高いプラットフォームを作りたいなというのを思っています。今ならそれができるんじゃないかなと思うので、そこを今のエンジニアたちと一緒に少しずつ作っていきたいなというふうに思っています。

Q. 以前、発表された第2世代プラットフォームについて教えてください。

2018年だったと思うんですけど、当時発表しました。その時は、自分たちの次世代の車両開発を見据えたプラットフォーム開発をしていたんですけども、そのプラットフォームは、その後グループ企業向けのプラットフォームに改良しまして、この数年開発をしてきました。それが先日、発表したG2Jにもなります。ですので、途中でグループ会社向けの開発に切り替えてやってきましたので、それは一旦目処付けができたというところで、これからは、国内企業様向けに新たなプラットフォームを開発していきたいと思っています。

Q. アポロG2Jとはどういったクルマですか?

私達の親会社であるアポロフューチャーモビリティグループが計画をしている、ある車両開発のためのプラットフォームになります。ランニングプロトといいまして、走行テストするための、プラットフォームおよび車両になります。開発のためのプロトタイプという位置づけでもありますし、実際の量産を見据えた車両開発の一部にもなります。シミュレーションだけではなくて実際の車両を使った走行テスト、データ取りというのは必要ですので、そのための開発中の車両になります。ですので、あの形のまま世の中に量産されるというわけではございません。

Apollo G2J (2022)

Q. EVプラットフォーム以外の研究開発もされますか?

パーソナルモビリティとか、超小型モビリティとか、小型の自動車よりもサイズの小さいものっていうのは、最近、たくさんお話をいただいてます。これはプラットフォームというベースがあってお客様に応じてアレンジするものではなくて、ゼロからでも比較的開発しやすい規模のものなので、そういったお話がプラットフォームビジネスとは別に実際、やらせていただいてます。
実例でいうと、我々が発表しているモビリティスクーターもそうなんですけども、個人向けのパーソナルモビリティっていうところだったり、超小型モビリティに関しては、実際のお話をいただいて、開発をしたり、試作をしたりしています。

Q. パーソナルモビリティ開発は、これまでのノウハウが役立ちますか?

そうですね自動車に比べるともちろんその開発工数が少ないというのはありますけども、小さくても大きくても、法律と保安基準というものを適用しなきゃいけないので、自動車の保安基準だったり、小型モビリティの保安基準っていうのをしっかり理解をして、こういう作り方だったら法律を満たした乗り物になりますよとか、こういう構造にすれば耐久性能もありますよって言った、実際の自動車の開発経験っていうのを利用しながら小型モビリティの開発というのをしていますので、やはり今までのEVの開発の知見というのはかなり役立ってると思いますし、作りやすい反面ですね、ちゃんとできてないものっていうのも世の中にたくさんあるので、そうならないようにしっかりポイントを押さえた開発をするというのは、自動車メーカーとしてやらせていただいてますので、そこをメリットに感じていただいて、ご依頼いただくケースっていうのはあるんじゃないかなと思います。

Q. 相談や依頼はどのようにするべきですか?

そうですね、お問い合わせフォームにコンタクトいただくケースがほとんどなんですけど、出会いはそこですね。そこで実際に一度、打ち合わせしたいですっていうふうにご連絡いただくんですけど。私が対応させていただく時は、どうせだったら1回、京都に来てもらえませんかと。現場で車もあるので、ここで話した方がいろいろ説明できますのでって、言って現場の方に来ていただくっていうのをしています。来てくださる方の多くはやっぱり興味を持ってくださってる方なんで、現場で盛り上がるっていうところはよくありますので、リラックスして盛り上がると、実はこんなことしたかったんだっていうのを正直にお話してくださるんで、そこが非常に楽しいですし、次に繋がりやすいなというのは結構、思ってますね。

Q. 創設当時と比べて、現在のクルマ作りは進化しましたか?

具体的には言いにくいんですけど。本当にいろんなことができると思っています。10年前にトミーカイラZZを始めた時は、本当に引き算ばっかりだったんですね。これはできない、これを諦めなきゃいけないっていうのをたくさん引き算しながら、なんとかゴールにたどり着くというやり方だったんですけども、あれから10年経って、お付き合いさせていただく企業様も増えましたし、技術も進化してるので、やれることが非常に増えてきたんですね。
例えば、ある製品を作るときに削り出しで作るのか、あるいは型を作って物を作るのかっていう選択肢しかなかったんですけど、3Dプリンターが非常に進化しましたので、データさえ作れば、簡単に物が作れたり、しかもそれがそのまま量産に使えるようなクオリティでできたりするので短い期間で難しかったことができたりするようになると、もっともっといろんなことができますし、それをご一緒させていただく企業さんも増えてきたので、昔に比べると本当にやれることが増えたなと思いますので、当時、我慢しながら企画をしなきゃいけなかったところから比べると、こんなことしたいっていう議論がスムーズにできるようになってきたなと思いますので、今、クルマ作りが始まるともっともっと面白いんじゃないかなと思いますので、早めに始めたいなと思います。

Q. 開発スピードが格段に上がっているということですか?

スピードも上がります。その分やりたいことが増えてくるので、おそらく開発期間は変わらないんですけど、やれることが増えるという意味では、もっと面白いことができるんじゃないかなという実感をしています。
あとは、保安基準というものが日々変わっていくので、最新の保安基準をしっかり理解しながら、その中でできる私達なりのシンプルな車っていうのを作っていきたいなと思うんで、あれもこれも機能が入ってますというよりは、ある特徴に特化した尖ったものを今までよりももっと高い次元で実現できるんじゃないかなと思います。

Q. 今後、GLMのエンジニアリングサービスはどのようになっていくものですか?

これまでは私達の第1世代プラットフォームを使って、いろんな企業様のニーズにお応えしてきました。ADAS ZZもそうですが、新たな技術だったり、新たなニーズが、この10年でたくさん変わってきましたので、最新のニーズに合わせたプラットフォームをご用意するということをこれからのGLMとしてやっていこうと思っています。
もう一つは、実際のクルマ作りをしたいと、ゼロからの車を作りたいので、GLMの力を貸してほしいというお話もいくつかいただいてますので、企業様のクルマ作りを私達が黒子として開発をしていくというようなプロジェクトも、現在いくつか話が進んでおります。そういった形で完成車も研究開発車両も両方やっていければと思っています。これをエンジニアリングサービスとして、私達がこれから力を入れていく分野になります。


プロフィール

藤墳 裕次
1972年生まれ 大阪府出身
日産自動車ではSILVIA・SKYLINEなどFRスポーツカーの車体設計に従事。
川崎重工ではアメリカンバイク・VULCAN 2000の車体設計に従事し、自分たちで開発したバイクでアメリカ大陸を横断。
トヨタ自動車ではアンダーボディ設計責任者としてLEXUS GSの新プラットフォーム開発を主導。
大手OEMでの経験後、GLMに創業期から参画し、開発責任者 兼 車体設計エンジニアとして0からTommykaira ZZの開発・認証取得・量産化を実現。
現在はナンバーナインワークス株式会社 代表取締役 兼 GLMチーフエンジニアとして、社内外の様々なものづくり・クルマづくりに従事。

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