今回のテーマ「バッテリー」は、紛れもなくEVのコア技術のひとつ。現在の自動車開発で最も現在進行形な課題といえます。そんな今後を左右し、伸びしろが期待される技術をGLMで担当する33歳の若きエンジニア、榎木憲治(えのき・けんじ)にEVのバッテリーを通したエンジニア魂を語ってもらいました。

GLMでバッテリーパックの設計を担当するエンジニア、榎木憲治。

Q. EVのバッテリー開発に携わるきっかけはどういったものでしょうか?

GLM 榎木憲治(以下、榎木):もともと大学では機械工学を専攻していたのですが、新卒で内定をいただいた前職の会社で電気システムの部署に配属になり、バッテリーの道を歩むことになりました。昔から自動車のメカニカルな面に惹かれていたので、どうしても退屈な存在でした。電気はタイヤが回るみたいに分かりやすく目に見えるわけではないので・・・。ただ、ちょうどその時期は、初代「日産リーフ」の発売が目前のタイミングで、EVのバッテリー技術を極めることができれば、将来的に困ることはないだろうとみていました。

Q. 実際にバッテリーの“今”はどういったことになっていますか?

榎木:内燃機関に比べて、今もまだバッテリーは自動車にとって重くてかさばる存在です。いま、EVのバッテリーの本流となっているのは<リチウムイオンバッテリー>ですが、負荷がかかった際の発熱や、一度、火がついたら燃え広がる特性は変わらないでいます。エネルギー効率を高め、安全性も期待されている<全固体バッテリー>が次世代のバッテリーとして注目を集めていますが、まだ実証レベルまでは達していない状況です。 開発途上で今後がまだ“見えないもの”という部分でもそうですが、電気を扱う以上、開発は物理的にも“見えないもの”との格闘の連続です。例えば、バッテリー残量メーターひとつとっても、EVは同じリチウムイオンバッテリーを使うスマホやパソコンと比べるとスケールが違います。スマホやパソコン関係は容量計算がしやすいのに対し、EVは負荷電流がケタ違いに大きく、見かけの電流が常に上下してしまいます。さらにEVの場合は、回生ブレーキといった発電も関係するので一筋縄ではいきません。精度を高めるには、BMS(バッテリーマネージメントシステム)のSOH※等の推定精度が、より一層高くなることが必要ですね。

※“States Of Health”の略。バッテリーの劣化状態を計る指標

Q. バッテリー開発の日々はどういったものですか?

榎木:日々、バッテリーパックの設計を行っていますが、やはり電気は目に見えないので、もっぱら数値との戦いです。目に見えないということは、知らないうちにコネクターの先まで電流が流れているおそれもあるので、常に感電しないように安全に気を配らないといけません。過去にゾッとするような怖い経験をしたこともあります・・・(汗)。そのためグローブの着用はもちろんのこと、常にポケットの中は空にしています。

榎木:あと筆記用具も、プラスッチックといった非金属のものに統一しています。万年筆といったものはNG。作業環境では、活電部に工具などが落ちて短絡しないように細心の注意を払っています。そんな中、昨年、開設したGLMテクニカルセンターの環境は、宇治にあったR&Dセンターに比べ、充電設備をはじめ格段に作業スペースも広くなってたこともあって快適に開発に打ち込めるようになったと思います。

Q. GLMが目指すバッテリーを教えてください。

榎木:5年前にGLM初の完成車として発売になったTommykaira ZZは、大衆寄りのEVが搭載するバッテリーと比べると、軽さとスポーツ走行を導き出すために熱問題を紙一重なセッティングで設計したバッテリーパックでした。日産リーフのラミネート型のバッテリーが出力時に発生する熱を極力制御したものとは対照的です。現在、GLMでは第2世代のEVプラットフォームを開発中ですが、さらに幅広いキャラクターの車両に対応できるようなバッテリーパックを考えていて、国内のみならず国外に向けても様々な提案ができるようにしたいと思っています。前職では何かと縁の下の力持ち的な役割が多かったですが、GLMでは大手カーメーカーをはじめTier1、Tier2といった企業から、多くの研究開発のご相談をいただけるようになりました。自由な発想で様々なパートナー企業と開発できるGLMだからこそ、世界でも類を見ない新しいバッテリーに出会えるかもしれませんね。


プロフィール

榎木 憲治
1985年生まれ。京都府宇治田原町出身。
前職は研究・試作車受託開発の「東京R&D」。
バッテリーやモーターなど、電気系機械全般を
担当した後に2013年GLMへ入社。
現在は主にバッテリーを担当。
趣味はダムカード集め。

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